平成18年の会社法の改正によって、「合同会社」という会社形態が生まれました。
制度が出来てから10年以上が経過しましたが、まだまだ知られていないような気がします。
一般にあまりなじみはありませんが、実は大会社がこの形態をとっていることを知ると、一気に距離が近くなるような気がしませんか。
例えば、あの「Amazon」、あの「apple」、「エクソンモービル」など。
これらの「日本法人」が合同会社で登記されていると言われています。
まだまだ日本では「株式会社」が一般的ですが、合同会社の設立件数は年々増加しています。
また、2017年の1年間の設立された法人の内、合同会社の比率が約2割にまで達しています(株式会社が約7割)。
(商工リサーチ 2017年「全国新設法人動向」調査より)
さて、それでは合同会社という形態がどういうものなのか。
そして、「株式会社とは何が違うのか」を見ていきたいと思います。
1 合同会社とは
合同会社は、会社法で定める持分会社のうちの1類型です。
持分会社には、「合名会社」「合資会社」「合同会社」の3類型があり、そのうちの一つ、ということです。
持分会社は、株式会社と異なり、出資者たる社員間の人的信頼関係を基礎とする会社です(近しい人たちが共同で事業をするイメージ)。
ここでいう「社員」は、「従業員」のことではなく、出資者を意味しますので、株式会社であれば「株主」の地位と同じような位置づけです。
経営(取締役)と出資(株主)が分離している株式会社と違い、基本的に出資者である「社員」が経営を行います。
こういった説明では、おそらく具体的なイメージがなかなかつかめないと思います。
より具体的な合同会社の特徴を、箇条書きでピックアップしてみます。
- 「社員」は全て「有限責任社員」・・・出資した金額以上の責任は負わないことになっています。ここは、株式会社における「株主」と同じです
- 定款変更や持分の譲渡など、会社の重要事項の決定は「社員全員の同意」で決めるのが原則
- 株式会社では規制がある事も、定款で自由に定めることができる ・・・ 利益の分配や議決権割合を、出資額の割合と関係なく定めることができる
- 設立時や、運営時のコストが株式会社と比べて低い ・・・ 2の「株式会社との比較」で記します
- 「法人格が出来る」という点では、株式会社と変わらない ・・・ 会社名義の通帳を作ることも出来るし、税制の恩恵も受けることが出来る
一方、合同会社は未だ一般になじみがありません。
次のような難点も考えられます。
- 一般の方がもつ合同会社へのイメージは、微妙なところ・・・
- 閉鎖性の強い会社であるため、金融機関や取引先からの信用度は・・・
2 株式会社との比較
1では、合同会社の説明と、特徴についてご説明しましたが、ここでは株式会社との比較を一覧表にしてみました。
合同会社 | 株式会社 | |
設立コスト(定款印紙代) | 40,000円(電子定款であれば0円) | 40,000円(電子定款であれば0円) |
設立コスト(定款認証) | 0円 | 52,000円程度 |
設立コスト(設立登記の登録免許税) | 最低60,000円 | 最低150,000円 |
ランニングコスト(役員変更登記) | 原則任期がないため、変更登記不要 | 最長でも10年に1回は役員変更登記必要 |
決算公告 | 不要 | 年に1回は必要 |
利益配分、議決権の割合 | 出資額に関係なく自由に決めることが可能 | 出資額に比例 |
3 まとめ
以上のように、合同会社の特徴は「会社運営の自由度が高い、閉鎖性が強い、比較的コストが低い」です。
先に述べたような、大会社の日本法人に使われたり、きわめて小規模な会社を設立する場合に使われる場合があります。
未だなじみのない形態でありますので、一般的な信用度は低いと言わざるを得ません。
上記の「閉鎖性が強い」というのも、対外的な信用という部分ではマイナスであると思います。
・相続対策のための不動産管理会社
・個人の節税のための会社
・飲食店の運営会社
など、表に会社名が出ないような場合には、そういった対外的なイメージを考慮する必要がほとんどありませんので、合同会社も有力な選択肢になるでしょう。
一方、会社との取引が主(BtoB)であるような事業の場合は、株式会社を選択される場合がほとんどだと思います。
特に、信用を得るために法人を設立する方も多くいらっしゃいますので、そのような場合は株式会社をお勧めします。