相続手続きと言えば、「戸籍謄本」は必ずと言っていいほど必要になる書類です。
銀行に行っても、証券会社に行っても、相続登記をするにしても、相続放棄をするにしても、また遺言を公正証書で作る場合も必要です。
相続で戸籍の情報が必要な理由
それは、亡くなられた方(遺言作成でいえば遺言を作られる方)の相続人が誰なのかを示すため、です。
亡くなられた方の権利はその相続人に引き継がれますので、相続人が誰なのかがわからないと、手続きの申請を受ける側(銀行や法務局など)も、手続きのしようがありません。
また、相続人でない方に財産を渡してしまったりすれば、真の相続人の権利を害してしまうことになります。
そういうわけですので、財産関係の手続きでは戸籍謄本等の提出を求められることになります。
例えば、法務局に相続登記を申請するには、次のことを証明しなければなりません。
①相続の開始があったこと
②ほかに相続人がいないこと
③登記記録上の人物と戸籍記載の人物が同一であること
④相続人が相続開始時に生存していること
⑤誰が不動産を相続したか
この項目を見れば、戸籍が必要であることは言うまでもありません。
戸籍は、以前は、就職面接などで普通に提出を求められ、提出していたものですが(私も提出したようなしなかったような)、現在そのような会社はまずないでしょう。
戸籍の歴史をたどると、記載内容は少しずつ人権やプライバシーに配慮したものに変わってきており、戸籍を開示することにも特段の配慮がなされるようになりました。
そのような流れではありますが、相続の際には戸籍は手続き上どうしても必要になります。
相続人が誰なのかを客観的に示すことのできる資料は、戸籍しかないからです。
戸籍謄本と戸籍抄本
「戸籍」は役所に大切に保管されておりますので、私たちがその内容を書類で受け取る際は、戸籍そのものではなく、その写しを受領することになります。
その場合、「謄本」と「抄本」を選択することができますが、
「謄本」は、同じ戸籍に入っている全ての方の情報が記載されているもの
「抄本」は、本人のみの情報が記載されているもの
です。
戸籍が電子化された後は、謄本は「全部事項証明書」、抄本は「一部事項証明書」若しくは「個人事項証明書」と呼ばれる場合が多くなりました。
たしかにこの方がわかりやすいですね。
そして、相続に使われるのは主に「戸籍謄本(全部事項証明書)」の方です。
昨今、戸籍を外部へ提出する場面はほとんどなくなり、パスポート申請でも戸籍抄本で足りるため、相続の時に初めて戸籍謄本を見る、という方も多いかもしれません。
相続の段階になって、初めて知らなかった事実が判明しても不思議ではありません。
たとえば、
・亡くなられた方に、生前に認知した子供がいた
・兄弟相続の場合に、知らない異父母の兄弟がいた
ということはあり得ます。
専門家に依頼される場合は問題ありませんが、ご自身で相続手続きをされる場合は、くれぐれも戸籍だけはしっかり取って、相続人の漏れがないようにご注意ください。
万一、遺産分割協議が終わった後に相続人に漏れがあったことが判明すると、分割協議のやり直しが必要になります。
戸籍の取得方法
現在(令和5年)のところ、戸籍は「本籍地」の市区町村役場に請求しなければなりません。
(本籍地以外の役所で全国の戸籍を取得できるようになる法改正が検討されているようですが、「現在戸籍」のみのようです)
本籍地が近くであれば、市民課に行って所定の用紙に記入するだけなのですが、遠方にある場合は、郵送での請求が一般的です。
各自治体のホームページの多くには、戸籍の郵送取得方法が掲載されていますので、電話をしなくても必要書類の確認が出来る場合が多くなりました。
戸籍を取れる人、本人確認についても各自治体のホームページでご確認ください。