家を購入された、または建てられた時に、金融機関からその資金の借入れをした方は多いと思います。
いわゆる「住宅ローン」です。
その際、ほとんどの場合、取得した建物や土地に抵当権が設定されていると思います。
抵当権とは、その不動産から優先弁済を受けるための担保権の一種で、
「ローンを返済できなくなった時に、その不動産を売却した金額から返済を受ける権利」と言えばわかりやすいでしょうか。
要するに、金融機関が貸し倒れに備えるために設定するものです。
そして、やはりこの権利も、登記しなければ第三者に対抗できません(≒権利を主張できません)。
ですので、住宅ローンで家を建築や購入された場合は、自分の家や敷地の登記簿を見ると、「権利部(乙区)」の欄に、つぎのような登記がされているはずです。
順位番号 | 登記の目的 | 受付年月日・受付番号 | 権利者その他の事項 |
1 | 抵当権設定 | 平成××年5月1日 第1111号 |
原因 平成××年5月1日金銭消費貸借同日設定 債権額 金3,000万円 利息 年1・980% 損害金 年14・8% 債務者 甲市乙町一丁目1番1号 甲 野 太 郎 抵当権者 丙市丁町二丁目2番2号 帝都銀行株式会社 共同担保 目録(る)第9999号 |
債務者 甲野太郎さんが、住宅ローンを借り入れた方です。
ここでは「権利部(甲区)」の欄を省略しましたが、この例では、甲区の欄に甲野太郎さんが所有者として登記されています。
このような登記をすることによって、帝都銀行は甲野太郎さんへの債権を保全しています。
逆の見方をすれば、甲野さんはご自身の不動産を担保に帝都銀行からお金を借りた、ということになります。
そして、時が経過し、めでたく住宅ローンが完済されました。
そうすると、帝都銀行が甲野太郎さんに対して保有していた債権が消滅したことになります。
抵当権には「付従性」と呼ばれる性質があり、それは具体的には「債権が消滅すれば抵当権も消滅する」という性質です。
ということで、甲野さんが住宅ローンを完済したことで、帝都銀行の甲野さんに対する抵当権は消滅しました。
ところが、上記の登記は勝手には消えてくれません。
当事者が申請しなければ登記はされないのが通常です。
砕いた言い方をすれば、
「抵当権は実体上は無くなっているが、登記簿上の記載がそのままなので、事務的な手続きは残っている」というイメージです。
ローンを完済すると、金融機関から抵当権の抹消について説明があると思いますが、その際は速やかに手続きを取られることをお勧めします。
なぜなら、
この「実際は消滅している抵当権」でも、登記簿に残っている限りは、新たにその不動産を取得したい側にとって障害になります(抵当権の登記が残ったままの不動産は普通は買いません)。
また、時が経過したり、相続が発生した場合、いざその時に抵当権を抹消したい、となっても、当時金融機関から受領したはずの「登記に必要な書類」を紛失している場合も多々あって、手続きが面倒になります。
実体的に効力のない抵当権ですので、抹消すべき登記であることは間違いありません。
お早めにお手続きください。
この抹消登記は、複雑な登記ではありませんので、ご自身で手続きすることも可能です。
ただ、法務局に申請に行ったり、補正(間違いの訂正)があれば再度法務局へ、ということもあり、平日にお時間をとれる方でなければ厳しいかもしれません。
司法書士の報酬は高額ではありませんので、よろしければお問い合わせください。