一般的に、土地の売買は、売主と買主が合意すれば売買契約は成立し、合意により定めた時期に所有権は移転します。
しかし農地の売買の場合、所有権移転の効力を発生させるためには、原則として「農地法の許可」が必要になりますので注意が必要です(売買契約自体は債権契約として有効ですが)。
手続きの面からみれば、農地の所有権移転登記を申請するには、所有権移転の効力が発生していることを示すため、農地法の許可書等が必要になります。
「農地」とは
農地法上の「農地」の定義は現況主義をとっています。
農地とは、登記簿上の「地目」ではなく、「現在の状況が実際に農地なのか」どうかで判断します。
つまり、登記簿の地目が「農地」→ 農業委員会では「非農地」ということもありますし、その反対もあり得ます。
現在農家の方が耕作している農地であれば、農業委員会の手続きが必要であることをご存知の方は多いと思いますが、現在耕作されておらず、一見農地に見えないような土地が、実は地目が農地(田・畑)である場合もままあります。
この場合は、農地でないことを農業委員会に証明してもらって、登記簿上の地目を農地から農地以外の地目に変更した上で、所有権移転登記申請を行うことになります。ただ、必ず証明を出してもらえるとは限りませんので、あらかじめ農業委員会への問い合わせが必要です。
また、反対に、現況が農地ではあるけれども、登記簿を見ると、「原野」だったり「山林」など、他の地目の場合もあり得ます。
その場合は、農地法の許可が必要です。農地法上は現況主義をとっているからです。
いずれにせよ、土地の売買の際は、登記簿を調べて、その土地の地目が農地かどうかは必ず確認すべき項目になります。
そして、地目が「農地」であった場合は、前述の「農地法の許可」を得る手続きや、あらかじめ地目を農地以外のものに変更する手続きなどが必要になりますので、通常の土地の売買手続きと比較すると、時間がかかる場合が多くなります。
また、「地目が農地でない場合」も、「現況が農地の場合」は農地法の許可が必要ですので、まずは農業委員会に確認することが必要です。
なお、相続によって所有権が移転した場合は、上記の登記前の許可のような手続きは必要ありませんが、農業委員会への「届出」が必要となります。
これは、名義が変わったことを農業委員会にお知らせするための届出です。権利の取得日から 概ね10カ月以内の届出が必要とされています。
この届け出を怠ると罰則(10万円以下の過料)の規程もあります。
農業委員会は各市町村に設置されており、天童市であれば天童市役所庁舎内にございます。
当事務所で農地の相続登記を終えられた方には届出していただくようご案内しておりますが、当事務所で手続きを代行することも可能です。>>農地の相続手続き
「農地」の取引は一筋縄で行かないことが数多あります。
繰り返しになりますが、時間に余裕をもって、事前に各方面と相談しながら進めてください。