財産が、誰かから誰かに移転した場合、ほとんどの場合何かしらの税金の問題が発生します。
ですので、不動産を取得した場合にも必ずといっていいほど、税金の話が絡んできます。
「税金」と一口に言っても、ここで取り上げるだけでも数種類あり、その全容はなかなか理解、把握しにくいところです。
本稿では、不動産にまつわる税金について、あまり細々とした内容には触れず、概略を抑えられる程度のボリュームでまとめましたので、これから不動産を取得する予定の方の事前知識としてご参考にしていただければと思います。
1 登録免許税
不動産を取得した時の所有権移転登記や、不動産を取得するために銀行からお金を借りた時の抵当権設定登記を申請する場合、この登録免許税を納めなければなりません。
「登記所に払う登記料」みたいなイメージで考えてください。
例外はありますが、ほとんどの登記申請で納付しなければなりません。
本税の税額の計算方法は、概ね二パターンあり、
(1) 課税標準額(①) × 税率(②)
(2) 不動産の個数 × 1000円 です。
(1)について、
①の課税標準額は、所有権移転登記であれば、その不動産の固定資産税評価額です。
抵当権設定登記であれば、債権金額(借入金額)になります。
②の税率は登記の種類によって変わりますが、代表的なものを挙げると、
・所有権移転 ・・・ 2%(但し、相続等の場合は0.4%)
・抵当権設定 ・・・ 0.4%
があります。
(2)で計算する登記としては、抹消登記があります。
身近なところでは、住宅ローンの支払いが終わって金融機関の抵当権を抹消する場合に、この登記を用います。
家1棟と土地1筆に抵当権が設定してあったのであれば、不動産の個数が2個なので、2×1000円=2000円が登録免許税となります。
登記を司法書士に依頼すれば、司法書士は、司法書士の報酬と併せて登録免許税も依頼者様にご請求することになります。
「司法書士に何十万も払った」という話を耳にしますが、請求書を見ると、実際は登録免許税が何十万で、司法書士への報酬は数万円だった、ということはよくある話です。
なお上記の税率は、事案によっては特別措置法などにより時限的に税率が低くなっていたりしますので、実際の計算の際はよくお調べいただくか、司法書士にご相談をお願いします。
2 不動産取得税
後で触れます「贈与税」よりも、意外にこの不動産取得税について、ノーマークの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
それは、一般の方が関与する機会のある「相続」ではこの税金はかかりませんし、マイホームを取得した時も大きな控除枠(下記参照)がありますので、この税金を払う機会があまりないことも関係していると思います。
不動産を取得することで課税される税金ですので、買った時だけではなく、「もらった時」も課税されますので注意が必要です。
1.不動産取得税の計算方法
本則 : 不動産の価格×4%
「不動産の価格」とは、例外はありますが「固定資産税の評価額」と考えて大丈夫です。
2.不動産取得税の軽減
個人が居住用住宅を購入した場合、一定の条件を満たす住宅について、不動産取得税が軽減されます。
① 住宅用土地の不動産取得税 → 宅地の価格×1/2×3% - 控除額
② 住宅家屋 の不動産取得税 → (住宅の価格 - 1200万円)×3%
※①住宅用土地の控除額は、45,000円か、既定の計算式により算出された額のどちらか多い方の金額となりますが、とりあえず45,000円は控除されるんだなと覚えておいて良いと思います。
※②「住宅の価格」と言っても、購入した金額ではなく、評価額はかなり低減された金額となりますので、家屋の部分の不動産取得税はかからなかった、という方は結構いらっしゃると思います。
但し、これらの軽減を受けるには、減額のための申請書を各自治体に提出しなければなりませんので、ご注意ください。
また、個人の居住用でなくても、宅地の3%、住宅家屋3%、という税率や、宅地の評価×1/2などの軽減措置が時限的に適用されています。
詳しくは、各自治体(都道府県)にお問い合わせいただくか、それぞれのホームページをご確認ください。
3 固定資産税、都市計画税
固定資産税は馴染みのある方も多いのではないでしょうか。
毎年納めている方が多いと思いますので。
都市計画税も、課税される地域の方は、固定資産税の明細をよく見ると、隣に記されています。
不動産を保有していると、これらの税金が課税されます(1月1日現在の所有者にその年の全額分が請求)ので、取得後の保有コストとして頭に入れておいた方が良いと思います。
1.固定資産税、都市計画税の計算方法
固定資産税 = 課税標準額(固定資産税評価額) × 1.4%
都市計画税 = 課税標準額(固定資産税評価額) × 0.3%
※都市計画税は、都市計画区域内の土地・建物に対して課税されることが基本ですが、私の住む市街化調整区域では現在は課税されていません。
2.固定資産税の軽減措置
軽減措置のうち、代表的なもの2つをご紹介します。
①住宅用地の軽減措置
A 小規模住宅用地(200㎡以下の部分) ・・・課税標準が1/6に減額になります
B A以外の住宅用地 ・・・課税標準が1/3に減額になります
→ 所有している土地の内、住宅が建っている部分の土地の評価を減額してくれる措置です。
ですので、更地に新たに家を建てれば、土地の部分の固定資産税は安くなりますし、これまで建っていた家を取り壊して更地にすれば、土地の部分の固定資産税が高くなります。
都市計画税にも、率は違いますが同じような軽減措置があります。
②新築住宅の軽減措置
新築から3年度分、住宅(120㎡までの居住部分)の固定資産税額が1/2に軽減されます。
→ 新築して一番評価額が高い時期の固定資産税を安くしてくれる措置です。
①も②も、一般の方がマイホームを建てやすくしている(または、もっと建ててねの)制度、と理解して良いと思います。
いずれも時限的な措置ですので、その都度各自治体のホームページをご確認ください。
→ 天童市はこちら
→ 山形市はこちら
4 譲渡所得税、住民税
この「譲渡所得税」については、全体を端的に説明するのが難しいですので、特例の種類や適用条件など、必要な個所を税務署等のホームページで確認していただくとして、ここでは税の概略と注意点、というまとめ方で記します。
1.不動産の譲渡所得税の概略
不動産を売った時(例外あり。下記2③参照)に、その利益に対してかかる税金です。
売却金額から、取得費や費用(仲介手数料等)などを差し引いた金額に対して課税されます。
税率は、所有期間が5年を超えるか超えないかで大きく変わるのが特徴で、
5年を超えない(短期譲渡所得) → 39%(所得税+住民税)
5年を超える(長期譲渡所得) → 20%(所得税+住民税)
です。
5年は、1月1日基準で判定します。
(例えば、平成30年中に譲渡した場合は、その土地や建物の取得が平成24年12月31日以前であれば「長期譲渡所得」に、平成25年1月1日以後であれば「短期譲渡所得」になります)
取得費が不明な場合は、収入の5%を費用とすることが出来ますが、「5%」ですので、収入から経費を引いたほとんどの金額に課税されることになります。
2.注意点
①特例が多い
マイホーム(居住用財産)の3000万円特別控除が代表的ですが、規定の条件に該当した場合に、特別控除を受けることができます。
この特例は種類がいくつかありますので、その把握が必要であることと、手続きをとって初めて適用になりますので、税務署等に問い合わせて手続きの確認をしておくことが必要です。
②翌年の健康保険料
譲渡所得税自体のことではありませんが、自営業者などの国民健康保険に加入している方は、前年の所得に応じて健康保険料が変わります。
譲渡所得もその年の所得になりますので、ある年に不動産を売却した場合、その翌年の健康保険料には注意が必要です。
事前に、どの程度の保険料が上がるのかを計算しておいて、その分は準備しておいた方が無難です。
③売っていないのに、課税される時がある
離婚する際の財産分与において、不動産を相手方に分与する際、分与する側に譲渡所得税が課される場合があります。
例えば、夫が妻に、現在の価値で1000万円の不動産を離婚の財産分与として譲渡した場合、夫がその不動産を取得した時の価値が300万円だったとしたら、その差額700万円に対して譲渡所得税が課税される、という仕組みです。
夫にお金が入ってきたわけではないのに、夫側に課税されますので、注意が必要です。
5 贈与税
これは、不動産に限ったことではありませんが、個人から無償で財産をもらった場合、贈与税がかかります。
年間110万円まで非課税とされていますので、1年間でそれ以上もらった時に課税されます。
もらった人に対して課税されますので、もらったことだけしか頭にないと、後々困ることになりますのでご注意ください。
税率は、贈与金額が大きくなるほど高くなる累進税率です。
10%~55% (平成30年)
贈与について、一般の方が一番関心があるであろうと思われるのが、相続対策としての贈与ではないでしょうか。
相続税が心配だから土地を子や孫に贈与しておく、おじいちゃんが孫の通帳を作っておいてそこに積み立てをしておく、という話はよくある話だと思いますが、贈与税のことや、贈与そのものが成立しているか、についてよく理解しておく必要があります。
当事務所でも一般的なご案内は可能ですが、実際に実行される場合は、税務署や税理士さんに確認されることをお勧めします。